知らぬが仏

先日、毎年恒例の社員旅行に行って来ました。

夜の宴会も和気あいあいに進み、宿の人とも楽しく会話が進んでいました。

その時に当社の社員が何気なく聞きました。

「もしかして、この旅館で幽霊見た事ありますか?」

「いやー、私は見たことないですが、お客様が見たという報告はありました」

「ええー、それって特定の部屋ですか?」

「まぁ、だいたい決まってますね」

「どこの部屋ですか?」

「いやー、それはちょっと・・・」

お酒の勢いもあり、教えてほしいと頼む社員とためらう宿の人。

ついに宿の人も折れて「本当にいいんですね」と念押しし、教えてくれました。

「西館の305号室です」

「 ・・・・  その部屋は社長の部屋やん!」 叫ぶ社員と半笑いの私。

その話題はすぐに終わったのですが、寝る時に思い出しました。というより頭の片隅から
離れなかったのですね。

すると洗面所の方からポトン、ポトンとしずくの音が・・・。

完全に蛇口は止まっているのに、音だけが静寂の部屋に響きます。

となりではそんな話題も忘れているように、社員がグースカピーと眠っています。

「こわいなー」 と思っていると、全ての音が心霊現象のように聞こえてきます。

見る物全てが幽霊に見えてしまいそうなので、目も開けられません。

どうしようと思っていたら次の瞬間、朝になっていました。

知らぬが仏とはこのような事なのですね。